上山病院 富田裕
うつ病の患者さんは年々増え続けていると言われています。つい最近、すでに100万人を超えたと報告されました。そのため、うつ病はこころの風邪だなどと気軽に呼ばれるようにまでなっています。
でも、うつ病は本当にそんなに増えているのでしょうか。そして、うつ病は本当にそんなに軽い病気なのでしょうか。
気分が沈むのがうつ病か?
気分が憂鬱だ、気力がでない、頭がはたらかない、考えが悲観的だ、食欲がなくて眠れない…こんな症状があると「うつ病」だと簡単に決め付けられる傾向があるようです。
しかし、これは必ずしも正しくありません。うつ病と似た症状があるけれども、本当はうつ病ではない病気も沢山あるのです。ですから、うつ病らしい症状があるから、うつ病だと単純に診断するわけにはいきません。
なにが増えたのか?
もしかしたら、最近増えているのはうつ病ではなく、うつ病に似ている他の病気の方なのかもしれません。実際にそういう報告もなされていますが、これはとても大切なこと
です。
なぜならば、初期の診断が間違ってしまうと、いくら治療を続けても、症状がかえって悪くなったり、長引いたりしてしまうことがあるからです。
薬を飲めばうつ病は治るか?
その通りです。
診断が正しくて、薬の種類と量が適切であれば、ほとんどのうつ病の患者さんは治ります。問題はそうでない場合です。
うつ病の患者さんの9割近くは、最初内科や婦人科など精神科以外の病院を受診することがわかっています。そのため、うつ病とそうでない病気を誤診したり、漠然と抗うつ薬を処方されていたりすることも多いと聞いています。最近の抗うつ薬は副作用が少なく、非常に使いやすくなったこともその一因だとは思いますが…。
医者を選ぶのも治療のひとつか?
余談ですが、先日、テレビで「うつ病治療常識が変わる」という番組が放映されました。その中で、こういう医者
には注意しなさいと繰り返していたものを以下に紹介します。勿論自分自身の反省をこめてですが。
- 薬の処方や副作用について説明しない
- いきなり3種類以上の抗うつ薬をだす
- 薬がどんどん増える
- 薬について質問すると不機嫌になる
- 薬以外の対応法を知らないようだ
2009春号No51